2012年度で2回目のジャパンエキスポ参加となり、サムライ人気を改めて実感することができました。エキスポ来場者の主なる目的はアニメなどのポップカルチャーが大きいのですが、そこから派生した日本文化への興味、サムライ、忍者などの戦国期への興味などへも広がっています。また高年齢者の方々も多く、彼らの興味は日本文化への興味が主となっているように思われます。
ジャパンエキスポも今年で13回目を迎え、今までのアニメ、ポップカルチャー中心のイベントから、文化、産業を加えた4部門のバランスを取り、総合日本文化の発信イベントへシフトを移していると思われます。
欧州最大規模の日本イベントということですが、まだまだ不慣れなスタッフや段取りの悪さ、技術的な未熟なども目に付きますが、多くの来場者を集めるだけの魅力に満ちたイベントであることには間違いないでしょう。
来場者の平均年齢は15才〜25才と非常に若く、現段階では強い購買層ではないのかもしれませんが、ジャパンアニメを入り口に、日本の文化や生活習慣への興味へと変わってきているのも現状で、今後数年後には、フランスで”お弁当文化”が生まれるかもしれません。
単に異国の文化を紹介するイベントと違い、双方の文化の融合が起こす可能性を持つ世代が集まるこのイベントの将来性は、非常に明るいものと考えられます。
その中で、日本の歴史文化の代表格といえるのが、サムライ、ニンジャ、ゲイシャであり、今の段階ではまだヒーロー的な存在かもしれませんが、日本の文化の根源に近いところに、近年まで700年間続いた武家文化の影響が色濃く残っています。
日本伝統文化も単に古い格式のみを伝えるのではなく、現代にアレンジした伝統文化が生まれる可能性も、ここジャパンエキスポにあるように思えます。
しかしながら、伝統文化をアレンジしてポップカルチャーとして伝えるのではなく、本流の格を据えた後に、その啓蒙としてポップカルチャー化することは有効と考えられます。現代にそぐわない格式だけでもダメでしょうし、格式を持たないポップカルチャーでもダメでしょう。その双方のバランスを取りながら、また受側の要求に合わせたアプローチが重要であると考えられます。
これは、フランスという国が文化的に非常に高い水準を持っており、その国が遠い異国の地である日本の高度な異文化に対して大きなリスペクト感を持っているという背景が日本への興味につながっています。そうしたことから、その文化の背景や歴史を元にした現代という見方をすると、単にパフォーマンス的な文化活動では薄っぺらくチープなものと評価され納得されないでしょう。
そうしたことから、文化を伝えるにあたっては、地元のニーズの目線に合わせることも大切ですが、それはあくまで背景や格式をしっかりと持った状態で目線をあわせ、パフォーマンスすることが最も大切なことだと考えられます。
ジャパンウィークの提案
エキスポ期間中、別紙「ジャパンウィークの企画書」を、ジャパンエキスポ コンテンツ責任者の方々とミーティングを行いました。
ジャパンウィークは、ジャパンエキスポ期間週をジャパンウィークとして、パリ市内で日本イベントを開催するといった内容で、運営側も非常に前向きに進めていきたいとのことでした。
ジャパンエキスポ側も、単にジャパンエキスポの宣伝というだけでなく、日本週間という雰囲気の元、日本の産業を展開するのに最も良い雰囲気を作り出せると考えられ、今までのアニメ中心の企画会社から、日本文化、産業の窓口となる可能性は非常に魅力的であると考えられます。
こうした企画から生まれる様々な可能性は、産業、工芸、飲食など幅広く、日本の伝統工芸や産業など、外需の入り口としてジャパンエキスポを考えていくことは非常に有効だと思われます。
ジャパンエキスポやジャパンウィークを通して若い世代の好みの調査と口コミ効果、また日本に目を向けられている状態でのPRなど、リスクの高い欧州進出であっても、リスクを回避しながら当たりを見つけることができるので、決して悪くは無い道ではないかと考えております。
日本の伝統工芸や産業が、日本の成功事例をそのまま欧州に持っていっても、ピントがずれている可能性が高いのが現在の状況です。ジャパンエキスポの来場者は、非常に情報発信に長けた若者が多く、彼らの関心や興味を、ひとつのテストマーケティングの場として活用することも有効でしょう。
日本観光の可能性
イベント期間中、フランスの旅行業者が私たちのブースを尋ねてきていただきました。そこで話題になったのは、2度目の来日で東京、京都以外の観光地のお勧めはどこ?ということでした。
我々、武者隊としてブースにいましたので、興味は戦国期の観光や歴史体験ができる場所を探しているとのことでした。
中部地方は日本で最も戦国期の史跡が多い地域ではありますが、それが諸外国へ魅力として伝わっているわけではありませんし、一箇所で満足できる場所もありません。
しかしながら、ニーズとしては非常に高いニーズがあるとのことでしたので、中部地方に点在する観光地、史跡を、外国人向けの観光ルートとして紹介することができ、取りまとめができたらぜひ紹介したいといったお話をいただきました。
このような観光PRもジャパンウィークを使うことでPRしやすい環境になると思われます。
今後の問題点
私達、武家文化研究会は、これからのジャパンエキスポには非常に高い可能性を感じ、文化はもちろんのこと、伝統工芸などの産業面からも応援していきたいと考えています。
甲冑武者隊や忍者隊などが参加することで、日本を強くアピールでき、それがジャパンエキスポ、ジャパンウィークなどで、日本の文化、工芸、産業、観光といった幅広い分野で象徴的な役割を果たすことが出来ます。
しかしながら問題となるのは予算面となります。毎年補助も無く自費で渡仏するには限界があります。また武者隊も含め、人数が多ければ多いほど効果が出てきますが、ともなって費用が上がってきます。
彼らを連れて行くための予算をどこから捻出するのか?国や自治体から支援していただくのか、企業にスポンサーしていただくのか、それとも事業を行いその利益から捻出するのか・・・ いずれの方法も非常に困難な方法です。
最初の1年目はなんとか自費で行ったとしても、翌年は難しい状態です。
毎年継続した参加ができる経済的な基盤を作ることがこれからの課題と言えるでしょう。
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